高校生と新入生のみなさんへ

 ドイツ語圏の文学作品から、高校生や大学生のうちに読んでみていただきたい作品を選びました。不思議なことですが、ある年代に読まないと「グッ」とこない作品というものがあります。よい作品は、もちろん後で読んでも面白いことには面白いのですが、受ける衝撃が違います。

 そうしたドイツ語圏の文学の中から、今回はそれぞれ、運命の恋、おそろしいこと、不気味なもの、静かで美しいもの、誠実なこと、やさしい愛情、を描いた作品と芸術批評をひとつずつ選びました。ヴェルターやリルケに出会うのは、20歳ごろがちょうどよい潮時かもしれません。つまらなかったらいまは飛ばして、いつかまた読んでみてください。


『若いウェルテルの悩み』ゲーテ
 友達の恋人(婚約者)に恋をしてしまったヴェルター(ウェルテル)青年の苦悶の物語です。相手のロッテも思わせぶりなものだから、ヴェルターの苦悩は行き場を失い、もうどうしようもありません。主人公ヴェルターとロッテの手紙の遣り取りという形式で書かれていますので、ヴェルターの苦悩が痛いほど伝わってきます。

 ゲーテ(1749〜1832)の作品は200年後に読んでもすばらしいものです。『ファウスト』や『ヘルマンとドロテーア』などの大作もお薦めですが、受験勉強が終わって大学へ入学したら、ぜひ一度ゲーテの小さな詩をドイツ語で朗読してみてください。『旅人の夜の歌』など、「これ以外に描きようがない」と思わせるすばらしい詩があります。

『変身』カフカ
 朝起きて自分がでっかい虫になってしまっていたら。そんなあり得ない状況に追い込まれたグレゴールのお話です。ひっくり返っても起き上がれず、仲良しだった妹に罵られても、涙も出せません。いわゆる映像メディア(映画やアニメ)ではどうしても形象化しきれない、悪夢のような世界を堪能できる小説です。

 作者のカフカ(1883〜1924)は、ハプスブルク帝国のプラハ(現在はチェコの首都)で活動したドイツ語で書いたユダヤ人作家です。昼間は王立の労働者傷害保険局で公務員として務め、夜は執筆するという生活を送りました。カフカの場合、書くことと生きることは表裏一体で切り離せないものでした。いまだに説明しきれない独特の不思議な世界観を持った作品には、『城』、『審判』、『流刑地にて』などがあります。

『砂男』E. T. A.ホフマン
 主人公ナタナエルにはクララという可愛らしい恋人がいるのですが、彼は不気味な「砂男」の悪夢に苛まれてもいます。そんなナタナエルは、故郷のクララと離れて暮らしはじめると、オリンピアという名の少女との運命的な出会いを体験してしまいます。ナタナエルがそこから逃れることのできない思いとは、一体何だったのでしょうか。読者の想像を越えるような狂気と不気味さを描いているにも関わらず、ナタナエルの心情が不思議と共感も惹き起こす魅力的な作品です。

 ホフマン(1776〜1822)は、昼は判事として勤め、夜は狂気の世界を描いた小説家です。その作品は幻想文学に分類され、ファンタジーの源流ともなっています。現代のサブカルチャーにも通ずるおそろしい世界を描いた作品『砂男』は、自動人形(ロボットや球体関節人形)好きにははずせない、不気味で魅力的なものを描いた小説と言えるでしょう(もっとも球体関節人形をご存じの方は多くはないかもしれないのですが)。

『水晶』シュティフター
 幼い兄妹が小さな冒険を体験する物語です。クリスマスの日には、様々な問題が起きたとしても最後には必ず解決される、という展開(海外ドラマでも定番ですね)なのですが、すがすがしい雪山の自然描写と兄妹のけなげなセリフが印象的な作品です。

 シュティフター(1805〜1868)はオーストリア(ドイツ語が公用語)の小説家です。画家を目指したこともあるシュティフターの自然描写は、他の作家にはない独自の静かで美しい世界を作り出しています。この世界観が気に入ったら、『みかげ石』、『石灰石』などの『石さまざま』シリーズや『晩夏』を読んでみてください。

『若い詩人への手紙』リルケ
 作家をこころざす若者へ、先輩詩人リルケが往復書簡でアドバイスをします。リルケはこのころ精神的にも困難な時期(スランプ)を迎えていましたが、若い詩人のため、創作活動について誠実に語ります。芸術や創作活動に魅力を感じるなら、この本はよいお伴になるかもしれません。

 リルケ(1875〜1926)については、その詩が高く評価されますが、形而上学的な内容(存在や信仰などに関する内容)が含まれる難解な作品もあるため、ひとりで読むのは大変かもしれません。その一方で小説『マルテの手記』では、当時発展しつつあった大都市で生活することへの不安など、いま読んでも興味深いテーマを扱っています。
 ところで、手紙を受け取った「若い詩人」はその後職業「詩人」になったと思いますか? 気になったら調べてみましょう。

『二人のロッテ』ケストナー
 演劇や映画、テレビアニメにもなったケストナーの児童文学作品です。まだ読んでいないひとはぜひ読んでみてください。ちょうど大学で4年間ドイツ語を頑張るとひとりでも原文を読めるような内容です。

 ドイツ文学にとって第二次世界大戦(そしてユダヤ人迫害)は避けて通ることのできない重いテーマとなりました。ナチスに協力することを拒否した作家たちが次々と亡命するなかで(ナチスに迎合する作家も現れるなかで)、自らも退廃芸術の烙印を押され、秘密警察から尋問を受けながら、ケストナー(1899〜1974)はベルリンに残ります。広場で自らの本が焚書される様子を群衆に紛れて見つめたケストナーは、実は自分がユダヤ人の子なのではないかと疑って育った過去がありました。

 子どもたちの愉快な生活を描いた児童文学作家に過ぎないと見なされがちなケストナーですが、実は厳しいモラリストとしての視線を持ち合わせています。戦争や平和に興味のあるひとは『ケストナーの終戦日記』を読んでみるのもよいでしょう。翻訳されていない詩などに表れた容赦のない批判精神を知ると、『エーミールと探偵たち』や『飛ぶ教室』といった児童文学作品も違ったものに見えてくるかもしれません。

『複製技術時代の芸術作品』ベンヤミン
 19世紀末から20世紀初頭にかけて、「複製技術」が爆発的に発達しました。ベンヤミンは絵画の芸術性を認めつつ、その「複製(コピー)」可能性に着目しました。芸術作品は、やがて写真という表現方法を獲得して機械的に複製されるようになり、当時の最新技術であった映画が「受容者」の態度を一変させます。

 映像という未体験の刺激に人々は魅了され、かつてテキストや絵画、彫刻などをじっくりと鑑賞していた時代のように、対象を熟考することを忘れてゆきます。ベンヤミンの指摘は、テレビの時代を経て、ネットの時代へと変遷していく今日でも、示唆的でありつづけています。

 ヴァルター・ベンヤミン(1892〜1940)は「世紀転換期(19世紀末から20世紀初頭にかけての時期)」に活躍した思想家です。1925年に書いた論文『ドイツ悲劇の根源』や『パサージュ論』など、興味深い論考を著しています。


 ドイツ語で書かれた文学としては、ここに紹介した他にもグリム童話やミヒャエル・エンデなどの児童文学作家の作品が日本でも人気があります。ムージルやシュニッツラーといったオーストリア人作家もドイツ語で作品を発表しました。演劇で言えば、ビューヒナー、ブレヒト、ハントケ、イェリネックなどがいます。詩人としてはハイネやシュトルム、ヘルダーリン、トラークルなどがすばらしい作品を残しています。近年では『朗読者』を書いたシュリンクが日本でも話題になりました。ノーベル文学賞作家としては、トーマス・マンやヘルマン・ヘッセ、ヘルタ・ミュラーなどを挙げることができます。最近では、日本で生まれて日本の大学で学んだ後にドイツへ渡り、ドイツ語でも作品を発表している多和田葉子も活躍しています。










 ドイツ語圏の文学を特別研究(卒業論文)に選ぶと、ドイツ語関係の授業や欧米の文学、思想、歴史といった授業を中心に履修していくことになります。1年次は全学共通教育の授業を中心に履修しますが、2年次になると「講義」の履修が可能となり、3年次以降は「演習」の授業に参加しながら卒業論文の準備を進めることになります。

 以下では、とりわけ『ドイツ文学講義』とドイツ語の『多読』の授業を紹介し、開講科目の一覧を掲載して、授業の取り方について説明ます



 『ドイツ文学講義』は、2年次から履修でき、他学部や他課程、他コース、また留学生や岩手県内の他大学の学生へ向けても開講しています。そのため、主に日本語で授業を提供しています。岩手大学学内からは、人文社会科学部だけでなく農学部や教育学部からの参加者がいます。学部内からは人間科学課程や環境科学課程の学生も参加しています(ともに2013年度)。ドイツ語などの予備知識なしでの参加も歓迎します。「いわて高等教育コンソーシアム(単位互換制度)」参加校からの参加も可能です。

 2012年度、2015年度(前期)の授業では『メルヒェン』の成立過程とその研究史を取り上げました。このテーマでは、グリム童話を中心に日本の民話などにも言及しながら、昔話としての「メルヒェン」成立の経緯や、ジャンル論、研究手法の紹介などを行います。グリム童話から実例をとって、モチーフやプロットの分析を試みる場面もあります。

 2013年度、2016年度(前期予定)の授業では『ドイツ語圏の児童文学史』をテーマとしました。ドイツ語圏では古くから教育書が出版され、幼稚園をはじめとする教育環境も世界に先駆けて整備されました。そんなドイツでも啓蒙主義やロマン主義など時代ごとに、「子ども」という言葉の持つイメージはめまぐるしく変化しました。「子ども」が「無垢」なものと考えられた時代や、「神的な」存在と考えられて時代、さらにはそもそも「子どものための本」という概念がなかった時代もありました。授業内では、こうした「子ども」をとりまく環境の変化にも目を向けながら、ポイントとなる作品を紹介し、ドイツ語圏の児童文学の果たした(ときには押しつけられた)役割とその意味について考えます。

 2014年度(前期)の授業では、『ミヒャエル・エンデの貨幣観』をテーマに取り上げました。『はてしない物語』や『モモ』などで知られるドイツの児童文学作家ミヒャエル・エンデは、現代のファンタジー文学の旗手と見なされた人物でした。その作品は、単なる逃避的なファンタジーであるだけではなく、それ以前のドイツ文学から多様なモティーフを踏襲しながら、現代社会の様々な問題も織り込まれたものです。この講義では、エンデの貨幣観とその作品の関連について、作品や背景となる思想史、個人的な書簡になどに表れたエンデの活動などを追ってゆきます。エンデの足跡からは、ファンタジーの新たな側面について考えます。

 ドイツ文学研究室では、大学でなくては身につけられない語学力として、テキストを精確に読み解く能力の習得を重視しています。そのため演習科目では専門的なテキストに取り組むことになります。学生は卒業までに重要なテキストを自力で読み解けるようになることを目標としています。

 とはいえ、テキストの精読には大変な労力が必要となり、ひとつの作品を読み進める速度も遅くなりがちです。勉強をしていても頑張った「実感」が得にくいものです。そこでドイツ語圏の文学や文化を学ぶ一環として、「多読」のためにテキストを集め、授業内でドイツ語による多読を実践しています(これは東北大学で菊池克己先生が行っている授業に倣った内容です)。教員があらかじめテキストの単語数や難易度をリスト化していますので、参加者は授業内で毎回自分が何語読んだのかを把握することができます。

 2013年度は後期開講の「ドイツ文化論演習」で『多読』を取り入れた授業を実施します。半期の授業内で20万語の読書を目指して進めます。絵本からはじめて、児童文学史上でも意味のある児童書、『はてしない物語』などのベストセラー長編児童文学などを経て、卒業までには100万語を読み、簡単なペーパーバックに取り組むことができる程度の能力を目指します。

 多読用のテキストに関してはドイツ語多読データベースを作成しています。教員が収集したおすすめの児童書や学習読本を中心に、読み易さレベルや簡単な内容紹介、購入のためのリンク、LINEボタンやtwitterボタンを付けてありますので、興味の持てるテキストを探してください。岩手大学の学生であれば、教員研究室を訪ねていただければ貸し出します。



 2017年度に担当している授業21コマ分の一覧を掲載します。「川村」の名前が書いてある授業は、教員が一人で担当している授業です。「分担」はオムニバス形式の授業、「補助」は機器の操作等を担当している授業です。履修の際の参考にしてください。

2017年度(前期

2017年度(後期


※1年次履修科目は緑色、2年次以上の履修科目は橙色、3年次以上の履修科目は赤色、大学院の授業名は黒色





 最後に、岩手大学の人文社会科学部での授業の取り方を紹介します。とくに「副専修」を意識した履修が大切になります。「副専修」は岩手大学の人文社会科学部が採用している制度で、2016年度入学の学生から適用される「プログラム制」に基づいた認定制度です。卒業論文を書く自分の専門領域だけでなく、人文社会科学部内の他の専門領域に取り組むことで、幅広い視野を獲得することができます。

 例えば、「ヨーロッパ語圏文化プログラム」を「副専修プログラム」に選ぶ場合は、講義を中心としたプログラム基礎科目から10単位、演習を中心としたプログラム展開科目から6単位を履修し、合わせて16単位を履修することで、「副専修」が認定されます。なお、細かい規則もありますので、詳しくは履修の手引きをご覧ください。

 2年次から参加できる「ヨーロッパ語圏文化論」を履修すると教員の研究に触れることができますので、ヨーロッパ語圏文化プログラムを「主専修」や「副専修」に考えている人は履修してみるとよいでしょう。他にも、1年次後期開講の「国際交流研修」を履修すると1年次後期の春休みから参加できる「ドイツ語課題解決短期研修(ドイツ研修)」の準備にもなるでしょう。このドイツ研修に参加すると学部共通科目の「課題解決方研修(ドイツ語)」および「ドイツ語コミュニケーション(発展/実践)」の4単位が取得できます。

 ヨーロッパ語圏プログラムには、主にドイツ、フランス、ロシアの文学や語学を専門とする教員の授業が登録されていますが、ヨーロッパの思想、社会科学、表象文化論等の興味深い科目や英語コミュニケーション科目等周辺領域の科目もあります。従来よりもフレキシブルで学生の需要に柔軟に対応できるというプログラム制のメリットを活かしたプログラム構成になっていますので、ヨーロッパの文化に関心のある人には積極的に「主専修」「副専修」としてヨーロッパ語圏プログラムの科目を履修していただきたいと考えています。

 2015年度以前の入学生の履修についても説明します。2015年度以前の入学生も「副専攻基礎」や「副専攻」の認定を受けることができます。学生は卒業までに「副専攻基礎」の単位を修得する必要があり、特定の領域の授業へさらに参加することで「副専攻」を認定されます

 例えば、「欧米言語文化コース」で副専攻を希望する学生は、まず『ドイツ文学講義』や『フランス文学講義』、『文化研究方法論』や『欧米文化論』などの日本語で開講されている欧米言語文化コースの「講義」や『ドイツ語コミュニケーション基礎』、『総合ドイツ語』などで10単位をそろえることで「欧米言語文化コース」の「副専攻基礎」が認定されます。さらに『ドイツ文学』や『ドイツ語構造論演習』、『ドイツ語コミュニケーション応用』など「ドイツ言語文化領域」に関する授業を10単位履修することで「欧米言語文化コース・ドイツ言語文化領域」の「副専攻」が認定されます。

 学生は自分の所属するコース以外の「副専攻基礎」や「副専攻」を取得することになっていますから、法学・経済学や人間科学、環境科学などを専攻しながら、「欧米言語文化コース」の副専攻基礎や「ドイツ言語文化領域」の副専攻を取得することになります。欧米言語文化コースでは、他にも英米、フランス、ロシア、欧米史で副専攻を取得することが可能ですので、欧米の言語や文化に関心のある方は、副専攻に挑戦するのもよいでしょう。












 人文社会科学部では、ドイツへの短期研修として「ドイツ語課題解決短期研修」を実施しています。この研修は、1年次の外国語科目としてのドイツ語を勉強した直後の1年生もしくは2年生向けに2014年度から開設した短期研修です。ドイツ語の実践的な運用能力を伸ばすための語学研修と、身近なテーマについてドイツで調査を実施する課題解決活動がセットになった内容で、単位として認定されます。

 語学研修部分では、ドイツで実際に活動するための言語運用能力を、ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)に基づいたクラスで学習します。具体的には、初級のA1〜中級のB1程度のクラスに参加します。ドイツの大学の学生寮に暮らしながら約2週間授業に参加する内に、1年次に学んだドイツ語が実際にドイツで役に立つ感覚を体験してほしいと考えています。クラスによっては世界各地からの留学生と一緒になることもあり、海外での国際交流も体験できます。

 課題解決活動では、将来の職業選択と結びつくテーマについて実地調査を行います。事前研修等で参加者各自が将来の研究や就職活動を見据えたテーマを定め、実地研修で実際に調査を行います。課題解決活動を通して、SNSを活用して「計画」や「実践報告」、「振り返り」と「まとめ」を共有し、成果報告も実施し、参加者各自が将来を考えるきっかけにしてゆきます。

 なお、研修中は担当教員(2015年度は川村)が引率する形になっています。学生生活に影響が少ない時期を選び、費用も可能な限り抑えるように配慮した研修となっています。各種補助金もありますので、積極的に参加していただきたいと考えています。ドイツ語課題解決短期研修の様子については SNS(Google+)のホームページ をご覧ください。募集については、毎年10月下旬から右上の画像のようなポスターを掲載しますので、学生棟A棟などの掲示板をご覧ください。



 上記の研修ができる以前から、ドイツ言語文化に所属している学生たちや授業に参加している学生たちは、ドイツ語圏の国ぐに(主にドイツ、オーストリア、スイス)へ毎年積極的に留学しています。日本から夏期の語学コースに参加するためには、航空運賃などの費用が必要とはなるのですが、参加した学生たちはそれぞれに貴重な体験を得て帰ってくるようです。研究室には留学関連の書籍などの資料も揃えおり、研究室以外の学生たちも相談にやってきます。教員も夏期語学コースへの参加申し込みの手続きをはじめとした相談を受け付けています。

 ドイツ語圏の多くの大学では、夏休みになると寮で暮らす学生たちに一度部屋を空けてもらいます(学生たちは実家に帰ったり、バカンスに行ったり、思い思いに過ごします)。その空いた部屋を貸し出す形で、ドイツ語の夏期コース(Sommerkurs)参加者を受け入れています。その他にも一般のドイツ人家庭へのホームステイや、数人でひとつの建物をシェアするバンガロー形式の寮などもあります。

 ヨーロッパ各地(イギリス、フランス、スペイン、イタリア、ギリシャ、マケドニア、ハンガリー、ポーランドなど)や北欧、ロシア、オーストラリア、カナダ、トルコをはじめとした中東、アジア各国など、世界各国から学生が集まり、語学力に応じて初級クラスから上級クラスに分かれ、各地の大学やインスティテュートでドイツ語を学びます。ヨーロッパの政治や経済の中心地のひとつであるドイツへ世界中から学生や社会人が集まります。ドイツに語学留学するのですが、実際には世界中から集まった学生たちと交流することともなります。2週間程度から1ヶ月、2ヶ月など様々なコースがドイツやオーストリア、スイスの各地で開かれています。芸術の街ウィーンでは、午前中はドイツ語を学び、午後はヴァイオリンなど持参した楽器の演奏を学ぶ、というユニークな企画もあります。

 ヨーロッパへの留学に関しては、旅費など経済的な負担の問題がありますので全員に推奨することはありませんが、岩手大学のドイツ言語文化では毎年所属学生の約半数がミュンヘンやドレスデンなどへの短期留学に挑戦し、貴重な経験を積んで帰ってきます。就職活動などの日程との兼ね合いで変化しますが、早いひとは2年生の夏に、多くは3年生の夏に留学するようです。前述の「ドイツ語課題解決短期研修」では、引率形式ということもあり1年生後期から参加できます。

 短期留学を足がかりに、長期留学を試みるのもよいでしょう。ただ長期留学やそのための各種奨学金の申請には、ドイツ人教員の語学能力証明書やドイツ語の申請書、申請理由書などが必要になります。これらの準備については、人文社会科学部の学生に限らず岩手大学の学生であれば随時相談を受け付けていますので、教員(川村)まで直接連絡してください。

 旅行について紹介すると、ドイツの観光シーズンは、やはり5月から6月の初夏の時期と言えるでしょう。8月や9月もよい時期で、北海道よりも緯度の高いドイツは夏場なら夜10時ごろまで日があります。ドイツの多くの都市には劇場が整備され、9月ごろになると夜には連日公演が開かれています。学生向けの当日チケットも格安で販売されていますので、旅行の予定にオペラや演劇の鑑賞を組み込むのもよいでしょう。ところで、学生は劇場だけでなく、美術館や博物館などで多くの割引サービスを受けられますので、大学生協などで取得できる国際学生証を持参することを忘れないようにしましょう。

 夏場の日が長い一方で冬は寒いドイツですが、2月や3月に旅行や語学研修に行く学生も、十分に楽しんで帰ってくるようです。冬場は航空運賃が節約できるのも魅力と言えるでしょう。ただクリスマスシーズンに旅行するのは、もしかすると控えた方がよいかもしれません。クリスマスは家族の時間ですから、日本のクリスマス商戦とは違って、蚤の市が終わるとみな家で静かに過ごしています。ドイツに知り合いがいない場合は、さみしい旅行になってしまうかもしれません。