辞書の選び方(専門編)


専門にドイツ文学などを学びたいひとに向けた辞書の選び方(専門編)です。大学1年生などはじめてドイツ語を学ぶひとは辞書の選び方(入門編)の方を参考にしてください。

専門編の辞書

「専門」と書いたのは、ドイツ文学などを専門分野にして演習の授業に参加したり、卒業論文を書いたりしたいひとを念頭に書いています。ここではおすすめの辞書をいくつか紹介してゆきます。

郁文堂『独和辞典』

約11万語を収録し、質実剛健な(そのまんまの)タイトルが付いた不動の良書です。

この辞書の良いところは考え抜かれた内容です。発音記号や文法は簡潔な略語で示され、要所要所に的確な文法解説が入ります。文例も豊富です。

この辞書の使いづらいところは、とにかく調べるのに時間がかかるところです。他書では単語の直後にその単語の意味が一覧になっていますが、この辞書ではいちいち例文を読みこまないと意味を見つけられません。

しかし、この「いちいち例文を読みこまないと」というところがポイントです。この辞書は、最初は引くのに時間がかかりますが、最終的には最もドイツ語が分かるようになります。

というのも、結果的に多くのドイツ語の文を目にすることになるため、ドイツ語の文を目にした経験が蓄積され、いわば多読を行ったのと同様の効果が期待できるのです。

作文の授業などで「これはこう表現するよね?」「けどなんで分かるんだろう?」と思ってこの辞書を確認すると、ちゃんとその例文が載っている、という状況になる訳です。

難しいドイツ語でも「ドイツ語が分かる」という感覚まで辿り着きたいひとは『独和辞典』がおすすめです。

三修社『新現代独和辞典』

見出し語がゴシックでシンプルな構成の辞書ですが、使えば使うほどドイツ語が上手くなったように感じられる辞書です。

この辞書の良いところは、著者が日本語の達人だという点に尽きます。

ドイツ語と日本語では、そもそも発想の方法が違っているため翻訳しづらい表現が出てきます。そんなときにこの辞書を引くと、日本語として腑に落ちる訳語が載っていることが多々あります。

辞書の構成もシンプルで引きやすく、翻訳の授業などでこの辞書を使用すると、短い時間できれいな日本語の訳を作ることができるでしょう。きっと先生の評価も上がるはずです。

前述の郁文堂『独和辞典』とはひと味違った辞書ですが、自分が日本語が下手だと感じているひとや、すてきな訳を作りたいひとには最適の辞書です。辞書を引いて訳を作る作業が楽しくなるでしょう。

個人的には、いままで使用した辞書の中でも、使っていて楽しく、テンションが上がった辞書です。

小学館『独和大辞典』

初心者はこの辞書を使ってはいけません。しかし、ドイツ語辞書として欠かせない最後の砦です。

この辞書の良いところは、圧倒的な収録語数です。正しいドイツ語の表現については、ほとんどこの辞書が網羅しています。

この辞書の悪いところは、圧倒的にページ数と項目数が多いところです。基本的な単語についてもその意味が網羅されていることにより、自分が調べたい意味の解説を探すまでにいちいち時間がかかります。

初心者がこの辞書を使うと、簡単な単語の意味を調べるだけの作業に苦戦して、ドイツ語が嫌いになってしまいかねません。

ただし、この辞書を引いて見つからなかった単語は、独独辞典でも見つからないことがあります。この辞書は日本語の独和辞典のいわば最後の砦ですから、他の辞書で見つからなかった単語もこの辞書でチェックする、という使い方が良いでしょう。

もし、この辞書で意味が見つからなければ、学部の授業の予習としては諦めてもいいくらいです。その場合は、むしろ先生に質問した方が早いでしょう。この辞書を毎回授業に持参するには、さすがにすこし重いですが、ドイツ語を専門にする学生にとっては必携の辞書と言えます。電子辞書版もあります。

博友社『大独和辞典』

1958年刊、革装の表紙に鷲のマークが刻印され郷愁を感じさせる名著です。

この辞書の悪いところは、古いところです。例えば、Frau「女性」の項目を引くと、最初の意味が「女主人」という著者のこだわりを感じさせます。英語でお馴染みのコーパスなどもちろん無視した、ツッコミどころ満点な訳語の順番ですが、いまとなっては小気味よい素敵なこだわりです。

※著者の相良守峯さんがゲーテの専門家なのでこの訳になっているそうです。

この辞書の良いところは、特に昔のテキストを読んでいるときに説得力があることです。他書ではどうも理解できなかった単語や表現が、普通に載っていることがあります。

内容も現在でも普段使いの辞書として使える引きやすい良書です。だたし、分かりやすい文法解説などはありません。また、授業に持っていくと明らかに目立つでしょう。独特な趣味性を疑われるかもしれません。それから、ちょっと値段が高いかもしれませんね。

おすすめの辞書(専門編)

専門編のおすすめは、郁文堂『独和辞典』あるいは三修社『新現代独和辞典』です。いずれかを普段使いにして、どうしても分からない意味が出てきたときに小学館『独和大辞典』を引くと良いでしょう。その先は独独辞典の世界になります。個人的にはSandersに思い入れがありますが、それぞれの授業で先生に質問してみましょう。

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