辞書の選び方(入門編)


外国語を学ぶには辞書が欠かせません。とはいえ、入門的な辞書から10万語以上収録したもの、紙の辞書と電子辞書、web辞書でもいいのか、独和辞典と和独辞典と独独辞典と様々な選択肢があります。

入門編と専門編に分けて辞書の選び方を説明します。

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入門編の辞書

大学などではいわゆる第二外国語(初修外国語)として、日本語、英語以外の言語を学ぶ機会があります。

初級レベルの授業では、ある程度の収録語数(2万語程度)があって、簡単な文法的解説が各単語に書かれている辞書が使いやすいでしょう。

必要な語彙数

ドイツ語技能検定試験(独検)5級では550語、4級では1000語、3級では2000語程度を学習の目安にしています。ドイツやオーストリアなどでの基準であるヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)の入門レベルA1で使用される語数は800語程度、A2で2300語程度です。初級の教科書で使用される単語数は400語から800語程度になることが多いようです。

すると、実際に入門的な場面で求められる語彙数は2000語となります。多くても4000語程度という印象です(データベース化して数えましたが4500語程度ですね)。とはいえ、収録語数が4000語の辞書では少し専門的な単語になると収録されませんので、やはり2万語度の語彙数は欲しいところです。

「ドイツ文学を専門にはしないけれど、海外研修でドイツ語の語学コースに参加してみたい」とか、「独検2級まで受験したい」ということであれば、最初から5万語以上の単語が掲載された辞書を使うのがよいでしょう。

発音記号

辞書ごとの大きな違いとして、単語の発音が発音記号かカタカナひらがな表記か、という点です。カタカナ表記は本当に入門のうち(最初の数週間か数ヶ月)は便利なのですが、時間が経っても発音が上達しないかもしれません。

ドイツ語はつづりと発音が一致しているので、カタカナ表記でなくても一度発音のルールを学べば初見でも単語の発音ができます。発音記号で表記されていると、逆に単語と一緒に「発音記号も覚える」ことができます。発音記号は他の言語でも共通ですから、ドイツ語の辞書で発音記号を覚えてしまえば、後々他の言語を学ぶときに役に立つでしょう。

文法的な解説

文法的な表記の仕方にも注目しましょう。例えば、男性名詞であるVaterを表すのにも「Vater 男性」「Vater 男」「Vater m.」「der Vater」など様々です。おすすめは「der Vater」の表記です。入門の授業では男性名詞の変化「der des dem den」を覚える機会があるはずですが、「der Vater」と覚えておけば自動的に「…des Vaters dem Vater den Vater」と変化が頭に浮かびます。ところが「男性」と覚えると、「男性名詞だからder des dem denと変化するから、ここでは・・・」などと一手間多くかかります。個人的には「der Vater」といった表記が好印象です。

フォント(見た目の印象)

フォントも重要です。辞書は毎日のように目にするものですから、印刷されている文字が気分に合わないと少しずつフラストレーションが溜まってしまうかもしれません。一般的に明朝は読みやすいですが印象に残りづらく、ゴシックは印象には残りますが主張が強いですね。各出版社が色々と工夫していますから、それぞれの好みに合わせて選ぶと良いでしょう。

おすすめの辞書(入門編)

さて、以上を踏まえて、独断と偏見によって選ぶ入門編のおすすめの辞書は、大きめサイズなら『クラウン独和辞典』、コンパクトな辞書なら『デイリーコンサイス独和・和独辞典』です。

入門編の辞書はどれを選んでも基本的には間違いないのですが、『クラウン』は発音記号を覚えられること、十分な語彙数があること、文法の説明も丁寧であること、そして最後にフォントがきれいです。フォントに関しては、もはや個人的な好みの問題に過ぎませんが。

小さめの辞書は一般に文法説明と発音記号は期待できないので、語彙数が問題になります。『デイリーコンサイス』は専門の授業にも対応できる語彙数があります。和独も付いているので海外研修でも活用できるところがポイントの高い良い辞書です。なにしろサイズがコンパクトです。

ただ、入門編の辞書は専門的なテキストを読むには語彙数や解説の点で限界があります。ドイツ文学を専門にする学生は、2年目か3年目には専門編で紹介する辞書に切り替えた方が良いでしょう。

電子辞書と紙辞書

最後に電子辞書について書いておきます。電子辞書の利点は、検索が早いこと、発音を音声で確認できること、学校へ持っていく辞書が減ることです。不利な点は、何度も引いている単語でも、いちいち「下」ボタンを連打しないとマイナーな意味までは辿り着けないこと、電池が切れるとお手上げなことです。

個人的には電子辞書も便利だと思いますが、専門的な勉強をする場合にはすぐにフラストレーションが溜まることになるでしょう。3年生くらいまで電子辞書で「サクサク」上達するのですが、少し古いテキストや気の効いた表現に出会うとお手上げになります。

というのも、専門的な勉強をする際には、マイナーな意味を調べる機会が増えます。現在の電子辞書には『クラウン』『アクセス』『小学館独和大辞典』が入っている機種がありますが、語彙数や内容が充実した電子辞書を使ってマイナーな意味を調べようとすると、、、「下」ボタン連打状態に突入することになります。

紙の辞書なら何度も引いた単語は、大体どの辺にその意味が載っていたのかを空間的に覚えられます。結果として、いらいらせずに勉強できると思います。ただし、中学校以来電子辞書だけで勉強してきたひとは、この段階で壁に直面することになってしまいます。

世の中のすべての辞書が電子化されて脳に直接接続される日が来るまでは、語学の勉強には紙の辞書を引く能力が求められます。それなら、最初から紙の辞書で勉強する方が「紙の辞書を使える」スキルが身に付くでしょう。小さなキーボードと「下」ボタン連打で苦労するよりも(そこは素直に未来の技術革新を待つことにして)、勉強は勉強で面白がる方が有意義な時間になるでしょう。

本という形式を発明しそれが受け継がれてきた理由も踏まえて、人間の知覚や知性に即した形式の電子辞書が発売されることを期待したいですね。私は辞書屋さんではないので、そこは専門家にお任せしますが、検索できる大型PDFが最適かなと思います。「縦長大型電子ペーパーとフルサイズキーボード付きの電子辞書」が欲しいのですが、発想が前時代的かもしれませんね。

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